たった一言で,その日の授業が,
予定とは違う方向へ進むことがあります。
「なんで?」
「ほんまに?」
「ちょっと待って」
「それ面白い」
「そこは分からん」
私は,プライベートレッスンでは,
こんな一言をとても大切にしています。
なぜなら,
その一言が,レッスンの“分かれ道”になるからです。
■ 学校では,なかなか言えない
学校の授業では,
先生が前で説明している途中に,
「ちょっと待ってください」
「今のところ,分かりません」
と,話を止めるのは,
なかなか難しいと思います。
周りにはほかの生徒もいますし,
授業には進度もあります。
でも,
プライベートレッスンは違います。
■ 質問するというより,反応してほしい
私は,
プライベートレッスンでは,
「上手に質問しなくちゃ」
と考える必要はないと思っています。
むしろ,
思ったことを,そのまま口にしてほしい。
「え?」
「なんで?」
「ちょっと待って」
「今の分からん」
「もう一回」
「それって,こういうこと?」
これで十分です。
その反応があることで,
私は,その場で,
説明を止めるのか,
言い換えるのか,
例を出すのか,
もっと先まで話すのか,
変えることができます。
■ 「正多面体って,宇宙には何種類あると思う?」
例えば,中学1年生で
正多面体を勉強していたとします。
教科書には,5種類載っています。
そこで私は尋ねます。
「正多面体って,宇宙には何種類あると思う?」
「100個くらい」
「数えられないんじゃない?」
「教科書にそう書いてるから,そうなんでしょ」
「別に興味ない」
いろいろな反応が返ってきます。
そこで,
「でも実は,5種類しかないんだよ」
と。
「そうなんですかー」
で終わる子もいれば,
「そうなんですか?!」
となる子もいます。
そして,
「えっ,どうしてなんですか?」
と聞く子もいます。
ここが,
その日のレッスンの
“運命の分かれ道”です。(笑)
「どうして?」
と来れば,
なぜ正多面体が
5種類しか存在できないのか,
そこまで話すことができます。
「一つの頂点に面が2つ,では立体にならない。
だから,少なくとも3つは必要。
でも,頂点に集まる角の和が360°未満でないと
立体として閉じることができない。
じゃあ,まずは,
正三角形が一つの頂点に3つ集まったら…」と。
でも,
特に興味がなさそうなら,
そこで終わっていい。
無理に話を広げる必要はありません。
■ 「地球一周は約4万km」――なぜ?
別の例です。
地球の円周は約4万km
と習ったとします。
そこで,
「なんで,4万kmなんだと思う?」
とこちらから話を振ります。
その時の反応によって,
またレッスンの行き先が変わります。
実は,
地球を測ってみたら,
たまたま約4万kmだった,
という話ではありません。
18世紀末,
メートルという長さの単位を決めるとき,
北極から赤道までの子午線弧の
1,000万分の1を1mとしよう
と考えられました。
ですから,
地球を一周すると,
およそ40,000kmになるのは当たり前なのです。
むしろ,そうならないと困るのです。(笑)
私は,高専時代に「電気計測」という科目で,
そうした単位の成り立ちや,測定について学びました。
ちなみに現在の1mは,
真空中の光が
2億9,979万2,458分の1秒間に
進む距離として定義されています。
(ちなみに,この数字も覚えています。笑)
そして,
地球1周は約4万km。
光速は約3億m/s,つまり,約30万km/s。
だから,
光は1秒間に地球を7周半します。
地球という大きさと,
1mという単位と,
光の速さ。
一見バラバラに見える知識が,
一本につながります。
私は,こういう瞬間が好きです。
■ 興味があれば広がる。なければ戻る。
大切なのは,
学校で習わないことを
たくさん話すことではありません。
「へえ」
で終わるなら,
そこで終わればいい。
「それ面白い」
なら,
少し広げる。
「なんで?」
なら,
もう一段深く進む。
私は,
その反応を見ながら,
どこまで話すかを変えています。
一人ひとりの反応によって,
レッスンは少しずつ枝分かれしていきます。
教える側だけが作るレッスンではありません。
生徒さんと一緒に作り上げていく,
一期一会のレッスンです。
■ 質問なんて,上手にしなくていい
だから,
「質問ありますか?」
と聞かれるまで,
待たなくていいんです。
「え?」
「なんで?」
「そこは分からん」
「ちょっと待って」
心の声をそのまま言っていいのです。
質問なんて,
上手にしなくていい。
というより,
わざわざ質問の形にしなくてもいい。
思ったことを,
そのまま口にしてください。
その一言が,
私にとっては,
次にどこへ進むかを決める
大切なサインになります。
そして,
たった一言で,
その日のレッスンの行き先が変わることがあります。
それが,
プライベートレッスンの
面白さの一つだと思っています。

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