10年以上使っているケースがところどころ傷み始め、一瞬買い替えようかと思ったのですが、お値段にうーん、という気持ちになりました。
楽器が買える値段でケースを買う意味...
よほど懐に余裕がないと、と思います。
ところで、わたくし、社会人一年目、某楽器店本店でケースの仕入れ担当をしておりました。
売れるもの、長持ちするいいもの、などは一致しないとよく心得ました。
レッスンには全く関係ないことなので、知っていることを公開したいと思います。
僕は、楽器が傷まないことと、ケース自体が長く使えること、を第一に考えていますので色々あしからず。
■形
<四角、オブロング>
弓の収納と楽譜ポケット、小物入れのスペース、縦置きなどが三角やシェイプ、ハーフムーンとの違いです。
弓は2本、3本、4本のパターンがあります。
縦置きは、あくまで移動中が基本。
<三角>
楽譜ポケット付きの場合もあります。
弓は2本収納。
縦置きは、あくまで移動中が基本。
<シェイプ>
ひょうたん型。
弓は2本収納。
縦置きは基本できません。
<ハーフムーン>
弓が2本までで、小物入れもそれなりに欲しい、楽譜も入れたい、という方にはオススメ。
■脚
地面に当たる脚が金属か、プラスチックか。
脚が本体にネジやビスで留められているか、表面のカバーだけに固定されているか。
本体に留められている場合頑丈です。
■縦に持つ時のハンドル
脚の観点に近いです。
外カバーだけに留めてある場合、そこから伸びて外カバーの生地が痛みます。
■リュック
肩紐のクッションの位置、肩紐の固定位置は背負わないとわかりません。
肩紐の素材やクッションによって、良い生地の服は擦れて傷みます。
シフォンのシャツをやっちまったことがあります…
背中にあたる滑り止めがある場合も同様です。
僕自身はリュックしないので、底面にあるリュック用の金具が邪魔だなぁと思っています笑
また、肩紐の金具の堅牢さ、外れにくさも色々です。金具同士も擦れていくと案外減っていくので、メーカーごとに考慮方法が違っています。
■蓋の留め方
<外カバーのジップだけで留める>
案外ジップの締め忘れがありえるので、天然さんはご注意。
<鍵と外カバーのジップで留める>
ジップを閉め忘れても鍵を留める癖があればセーフ。
鍵が壊れた場合、外付けなら修理しやすい。
内装を剥がす修理になるタイプかどうか。
<溝の噛み合わせと鍵で留める>
溝の素材と形状に注意。
薄いものは閉じるときに失敗して捻れると尾を引く。密封の面では有利なものの、ここから傷みがち。
■鍵の掛け方
そもそも、バイオリンケースの鍵は家の玄関の鍵とは違います。盗まれる時はまるっと盗まれます。盗難防止としてはまったく役に立ちません。
<ダイヤル錠>
ダイヤル錠が壊れた時のことを考えておきたいです。笑い話ですが、本番当日の控え室で開かなくなったエピソードを聞いたことがあります。。
■雨よけ
横持ちしたときに、鍵部分やジップを雨から守るものです。
役に立つものですが、金具で留めるか、磁石で留めるかなどがあります。
表面の素材によりますが、ここを大きく曲げたときに分厚い合皮や革だと付け根の皮が破裂します。
ココが傷みポイント
■素材 本体
<木製>
バイオリンケースの基本
木製の質にも色々あり。
薄いベニヤ、小屑や端材を固めたものもあります。
湿度調節に役立つとはいうものの、吸う量には限界があります。
蓋の微妙なカーブのつき方で圧をかけた時の凹み方が違います。
変形させずに楽器を守る思想。
<ダンボールと発泡スチロール>
基本分厚いことが多いです。
凹むことで衝撃を吸収する思想。
<カーボン>
外側だけカーボン模様のものもあります。要注意。
薄くて軽め。
ただ、ねじれに強い分、蓋を閉じる時の噛み合わせがやりにくいこともあった記憶。
<グラスファイバー>
丈夫、ただし重い印象。
<ABS樹脂など>
軽い、凹んで衝撃吸収する思想。
<耐火耐熱素材の樹脂>
やや重め。木製をパワーアップしたイメージだが、本当に燃やしたことはないので、どこまで持つのか不明。
■素材 外装表面
<布><合皮>
布の質もまちまち。
どうやっても基本は色褪せます。
どちらかというとパイピング素材が重要。
合皮のものはここから傷みがちです。加水分解を覚悟すること。
木製ボディの場合、湿度の伸び縮みが布と違って、布側がズレたり裂けたりする場合があります。
こういうところに湿度の伸び縮みの差で負荷がかかる
補修後
<本革>
味が出る、と思って使う。
裂けた時には素人補修が難しいが、そこまで傷んだものを見かけたことがないです。
手入れ、使い方次第の部分。
<シール>
ぶつけたら剥がれます。
加水分解もあります。
ボディが硬めでコーティングしてあるなら研磨剤でキレイになることも。
ステッカーを貼る人も多し。
<塗装>
ぶつけたら剥がれますし、よく触るところは擦れていきます。
昔のレンジローバーのように味としていく感覚があるかどうか。
ステッカーを貼る人も多し。
■ネックを留める方法
<紐>
これを面倒と思うかどうか。
ボディまで貫通しているタイプと内装の裏側で止めてある場合とあり。
これも本革か合皮か、糸を編んでいるかで差があります。合皮は加水分解が起きることを覚悟。
<マジックテープ>
マジックテープも布についているので、縫いが甘いとほつれてきます。
僕はマジックテープの音が世の中で1番苦手な音です。。
<蓋側のクッション>
紐もマジックテープもなく、蓋を閉じたらそのままケース内で固定できるタイプ
ただし、蓋の固定を忘れたまま持ち上げたら楽器が落っこちます。
■ネックの枕
スクロールがケースの底に当たる場合、ケースの中で楽器が浮いていない状態です。
ネックの付け根や楽器のボタン部分の下の枕の高さが不十分だと、ケースの衝撃がそのまま楽器に伝わります。
■楽器下部底面の枕
裏板の下の部分の枕のこと。
楽器の裏板は膨らんでいるので、楽器がケースの中で浮いている状態にできるかどうか。
裏板の形に合わせたクッションが全体にある場合もあります。
ケースの内装底面のクッションが薄く、平面の場合との違いはあると思います。
■小物入れの位置
楽器に対しての位置と、弓のフロッグに対しての位置で評価されます。
昔ながらだと
弓先-------フロッグ
小物入れ-------楽器
これだと、仮に弓のフロッグ固定が外れた時、留め忘れた時にボディに傷がつく可能性。
その対策で以下のパターンが増えました。
弓先-------フロッグ
楽器-------小物入れ
小物入れがポーチのように取り外し可能パターンがあるのですが...本当に取り外して使っている人は見たことがありません。。
■ストレート弦のチューブ
ストレート弦を買わない方でも、伸ばした後の弦を入れておくことがあります。
オブロングケースの多くはケース内や楽譜ポケットのところについています。
が、たまに取り付け部分だけあって、チューブがないことも。
■弓ヘッドの収納
<四角の穴>
この位置に注意したいです。
横に引き抜くときに、穴の位置が真ん中に近いほど弓先をボキッとやってしまう不安があります。
そのような事故がないように、穴側が割れて弓を守る思想のメーカーもある。
<ポケット>
ポケットの余裕と深さについては四角の穴と同じ観点で見たい。
掃除しにくそう、とは思います。
■弓フロッグの収納
このプロペラはメーカーによって色々です。
溝がついていて、直角になったときにパチっと音や感触で判断できると安心です。
一方で、プロペラの軸はネジなので、回す向き次第で段々抜けてくるメーカーがあります。
ネジを閉めれば済みますが、普段から回す向きに気をつけていたことがあります。
■横持ちハンドル
これがバカにできません。
素材、太さ、ボディへの留め方。
リュックの方にはあんまり関係ないかもしれませんが。
横持ちの場合、やっぱり本革巻きに敵うものなしと結論を出しています。
車のステアリングと同じです。
やっぱりプラスチックで細いとしんどいです。
■蓋を開けたときに90度にする紐やリボン
これを外に出してしまって蓋を閉めた日には最悪です。
伸びたりちぎれたりします。
両端についている場合、弓を取り出すときに邪魔にならないか、はよく見る必要があります。
弓を取り出す側についていない場合は設計思想が優れていると思います。
そもそもこれがなくて。180度開くタイプは安全ですが、机の上のスペースをとります。
蓋側に楽譜ポケットがあり、たくさん荷物を詰めているとリボンや紐に負荷がかかります。
また、蓋側が重いケースも結構存在していて、
楽器を取り出した後、楽器を置く側の箱が浮くことがあります。
■湿度計
役に立つかどうか...壊れていて機能しないことがほとんどだと思います。
落ちたときに楽器に傷をつけないようにプラスチックでできていることがあります。
また、交換のため?マジックテープで取り外し可になっていることがありますが、そもそもマジックテープの接着剤が剥がれて落ちた...という経験はしました。
ざっと思い出すのはこんなところです。
物価高でありますが、まだ2万円台で瓢箪型ケースが手に入れられるのはありがたいことです。
2年使えば1ヶ月あたり1000円以下ですから。
楽器ケースは粗大ゴミになりますし、昔ながらで鞄屋さんで修理したりしながら長く使いたいという方は、お手入れなどのイメージも持って、選んでもらいたいと思います。
木製や布なら燃やせばエネルギーになりますが、リサイクルできない微妙な素材もおおいですからね。
自分は、死ぬまでの買い替えはもうしたくないな、と思って既知の問屋さんまで見積もりに行ったのですが...ひょえええー、という値段でした。
で、木枠だけあればあとはなんとかなるわいな、と思い、たまたま見かけた中古のアルファケースを購入。アルファさんも廃業してしまいました。
縫いとか、ネジの留め方など細かい仕上げをみれば、決して高級ではないと思いますが、20年超えている手元のアルファケースはまだパイピングの合皮が加水分解していないのです。これはすごいことだと思います。
で、今回の中古品ですが、ハンドルの内側の芯の張り合わせが剥がれかけ、外の合皮が伸びて浮いていたのを無理くり直しました。


くっついた!
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