第14回:「まだやらないの?」|やろうとしていた気持ちを消してしまう声かけ
「まだやらないの?」子どもが宿題を始めていない時,つい口から出てしまう言葉です。学校から帰ってきて,少し休んでいる。夕食の前に,のんびりしている。寝る時間が近づいているのに,まだノートも開いていない。そんな様子を見ると,親としては気になります。そして,つい言ってしまいます。「まだやらないの?」すると,かなり高い確率で返ってくる言葉があります。「今やろうと思ってたのに。」ここまでなら,よくある家庭学習の風景かもしれません。親の心の中には,静かにこの言葉が浮かびます。「いや,絶対思ってなかったでしょ。」もちろん,口には出しません。出したら,たいてい負け戦になります。子どもはムッとする。親もイライラする。そして,宿題の前に,親子の空気が先に悪くなってしまいます。家庭学習名物,「今やろうと思ってたのに」問題です。■ 「まだやらないの?」は,意志まで責められているように聞こえやすいもちろん,親は責めたいわけではありません。宿題を忘れてほしくない。寝る時間が遅くなってほしくない。明日の朝に慌ててほしくない。そう思って声をかけているだけです。でも,子どもには,「まだやらないの?」が,責められている言葉のように聞こえることがあります。「やる気がないの?」「いつまで後回しにするの?」「やるって分かっているのに,なぜ始めないの?」そう言われたように感じることがあるのです。「まだやってないの?」は,できていない「状態」を見ている言葉です。でも,「まだやらないの?」は,子どもの「意志」まで問い詰める響きになりやすい言葉です。大人でも,同じようなことがあります。職場で,まだ取りかかれていない仕事について,上司から「まだやらないの?」と言われたら,どう感じるでしょうか。本当は,先に急ぎのメールを返していたのかもしれません。別の資料を確認していたのかもしれません。電話対応をしていたのかもしれません。それなのに,「まだやらないの?」と言われると,「今やろうと思っていました。」「こちらにも順番があります。」「見えていないだけで,他の仕事もしていました。」と,少しムッとした経験がある方もおられるかもしれません。子どもも,これに近い感覚を持っています。「まだやらないの?」と言われた瞬間,宿題のことを考える前に,まず自分を守りたくなるのです。だから,「今やろうと思ってた。」「分かってる。」「あとでやる。」という返事が出てきます。これは,ただの反抗とは限りません。自分の気持ちまで責められたように感じた時の,防御反応に近いものなのです。ここで子どもを責めても,宿題は進みません。むしろ,親子の空気だけが重くなります。これが,「まだやらないの?」の難しいところです。■ 親が見ているのは「行動」,子どもが守りたいのは「気持ち」親が見ているのは,行動です。ノートを開いていない。机に向かっていない。ワークが終わっていない。だから,「まだ始めていない」と思います。これは事実です。一方で,子どもが守りたいのは,自分の気持ちです。「サボっていると思われたくない。」「やる気がないと思われたくない。」「怒られたくない。」だから,「今やろうと思ってたのに」と言いたくなります。ここでもし親が,「思ってただけでしょ。」「いつもそう言うよね。」「じゃあ,なんで始めてないの?」と言おうものなら,子どもはさらに守りに入ります。宿題を始める前に,親子で言い合いになってしまう。
これでは,本来の目的からずれてしまいます。目的は,子どもを言い負かすことではありません。宿題を始めやすくすることです。■ 伸びる家庭では,「入口」と「終わり」を作る伸びる家庭では,「まだやらないの?」を少し変えています。たとえば,こうです。「何から始める?」「今日はどれを先にやる?」「ワークと音読,どっちを先にする?」このように聞くと,子どもは「やるのか,やらないのか」で責められるのではなく,「どう始めるか」を考えやすくなります。そして,もう一つ大切なのが,終わりの時間を先に決めることです。子どもにとって,「宿題しなさい」は,終わりが見えにくい言葉です。いつまでやるのか。どこまでやるのか。何が終わったら休めるのか。そこが見えないと,始める前から重く感じることがあります。だから,「まず何時までやるか決めようか。」「何時までなら集中できそう?」「15分だけやって,そこで一回休憩しようか。」のように,終わりを先に決めると,動き出しやすくなります。「何から始める?」は,入口を作る言葉です。「何時までやるか決めようか。」は,終わりを見えるようにする言葉です。入口と終わりが見えると,最初の一歩は少し軽くなります。■ 「全部やりなさい」より「最初の一歩」子どもが動き出せない時,原因はやる気だけではないことがあります。何から始めればいいか分からない。量が多く見えている。面倒なものから目をそらしている。始めたら時間がかかりそうで,余計に動けない。そういうこともあります。だから,「早く全部やりなさい」と言っても,動き出しにくいのです。それよりも,最初の一歩を小さくした方が
始めやすくなります。「まず,ワークを机に出そうか。」「1問目だけ見てみよう。」「音読を1回だけ先にやろうか。」「15分だけタイマーをかけて始めよう。」ここまで小さくすると,子どもは動き出しやすくなります。人は,始める前が一番重いものです。一度始めると,意外と続くことがあります。家庭学習では,最初からやる気満々にさせることより,始めるハードルを下げることが大切です。■ 言い換えるなら,こうする「まだやらないの?」を言いたくなった時は,次のように言い換えてみてください。「何から始める?」「どれなら今できそう?」「まず何時までやるか決めようか。」「15分だけやって,そこで一回休憩しようか。」「一緒に順番だけ決めようか。」どれも,子どもを責める言葉ではありません。でも,勉強から逃がしているわけでもありません。ちゃんと,次の行動に向けています。大切なのは,子どもの気分を完全に整えてから始めることではありません。気分が整っていなくても,始められる形を作ることです。「やる気が出たらやる」ではなく,「小さく始めたら,少しやる気が出る」。この順番の方が,うまくいくことがあります。■ 親の声かけは,命令より「設計」に近い家庭学習で親ができることは,子どもを毎回やる気にさせることではありません。それは,なかなか難しいです。むしろ大切なのは,動き出しやすい形を作ることです。時間を決める。場所を整える。最初にやるものを決める。量を小さくする。終わりを見えるようにする。これは,命令というより,学習の設計です。「まだやらないの?」と聞く前に,「どうすれば始めやすいか」を一緒に考える。これだけで,家庭学習の空気は少し変わります。■ 今日からできる二つの声かけ今日から試すなら,この二つがおすすめです。「何から始める?」「何時までやるか決めようか。」とても短い言葉です。でも,「まだやらないの?」とは,向いている方向が違います。「まだやらないの?」は,始めていないことを見ます。「何から始める?」は,これからの一歩を見ます。「何時までやるか決めようか。」は,終わりを見えるようにします。もちろん,この二つだけで,すべてがうまくいくわけではありません。それでも,親子の会話が少しやわらかくなり,子どもが動き出しやすくなることがあります。宿題を始める前に,親子で疲れてしまうのは,もったいないです。子どもがまだ始めていない時こそ,責める確認ではなく,始める入口と終わりを作る声かけに変えてみてください。■ 25分体験で,学習の始め方を一緒に整理することもできます実際には,「声かけを変えればすぐに動く」というほど,簡単ではないこともあります。宿題に時間がかかりすぎる。何から始めればよいか分からない。分からない問題の前で止まってしまう。勉強の順番が合っていない。こうした場合は,声かけだけでなく,学習の組み立て方を見直した方がよいこともあります。25分の体験レッスンでは,お子さんのノートやワーク,テストの様子をもとに,どこで手が止まりやすいのか,何から始めると動き出しやすいのかを一緒に整理することもできます。全部を変える必要はありません。まずは,「今日,最初に取りかかる一つ」を決めることから始めます。「声をかけてもなかなか始まらない。」「宿題に時間がかかりすぎる。」「親として,どこまで口を出せばよいのか分からない。」そう感じている方は,一度,学習の始め方を一緒に見直してみませんか。家庭学習は,気合いだけで変わるものではありません。始める順番,量,タイミングを少し整えるだけで,子どもが動き出しやすくなることがあります。家庭学習でよく起こるつまずきについて,こちらもあわせてご覧ください。■ 学習の「型」について第6回:書き順を無視すると,なぜ伸びにくくなるのか■ スマホとの向き合い方について第8回:スマホ戦争|取り上げるより「契約」にした方がうまくいく理由■ 新コラム:じょん先生はこう教える が始まります。第1回:和の法則と積の法則|「どっちか」ならたし算,「どっちも」ならかけ算※次回公開予定
※たまに,公開前のコラムが見えてしまうことがあります。
その時は,少し早めに届いた“先行公開”だと思って,
そっと読んでいただければ幸いです。
そうした読まれ方も,コラムづくりの参考にしています。
응답 (0)