公用語がふたつある国での生活

Kankurimori

最近、生徒からカナダについての質問をよく受けるので、何年か前にブログにアップした投稿を、今週のコラムとしてシェアすることにしました。少しでも勉強になれば光栄です。

カナダは1535年から1763年までフランスの植民地でした。そして、1763年から1982年までは英国の植民地でした。(今は英連邦の一員です。)それで憲法で国の公用語はフランス語と英語と定められています。日本人に「私はケベック出身です」と言うと母語がフランス語だとわかる人がほとんどですが、家でフランス語を話す、外で英語で生活すると想像する人が多いので、今日は公用語がふたつある国での生活の話をしたいとおもいます。ただし、カナダはとても広い国なのでケベック生まれ育ちのアラフォーの白人女性の経験を語ることしかできません。

 

※移民の国であるカナダで話されているのは実に200ヶ国語以上です。

カナダでのフランス語能力の地図。紺色はフランス語能力が一番高い。

 

ー家庭ー

私の両親は二人ともフランス系カナダ人なので生まれてからずっとフランス語で生活をしていました。家で英語を使う習慣はありませんでした。今はブリティッシュコロンビア州に住んでいるので生活はほとんど英語で過ごしています。(夫はフランス語も話せますがマニトバ州で育ったので英語の方が自然です。) ただ、私は今でも妹や父と話す時はフランス語を使います。そして不思議なことに、どんな言語を話していても、数えるときは必ずフランス語でやります。母語が一番早いです。

 

フランス系と言っても、先祖がフランスからカナダに移民してきたのは300年以上前です。フランスに親戚はいません。フランス系カナダ人のほとんども同じです。それでケベックとフランスのフランス語は結構違います。離れて進化したので発音やスラングはだいぶ違っています。ケベックのフランス語にはフランスでもう使われていない古い言葉がまだ残っています。通じないことはないですが、たまには説明が必要になります。

 

ー学校ー

ケベックで生まれたら、授業がフランス語で行われる学校に通わなければなりません。義務教育(16歳まで)全てがそうです。それでも例外はあります。両親のどちらかが英語系の学校を卒業していたら英語系の学校に通うことができます。私立学校の場合は、自由に選ぶことができます。(とても高いですけど。)なので、例外を除いて、学校生活は全てフランス語で行われます。英語を話すのは英語の授業の時だけです。私も子供の時、大勢の日本人のように、英語の授業が嫌でした。フランス語が通じるなら、英語はいらないと思っていました。日本で英語を教えていた時の私の生徒たちの英語に対しての気持ちがよくわかりました。実は英語がちゃんと話せるようになったのは20代の頃でした。

 

高校を卒業して、CEGEP(定義はこの投稿の最後にあります)と大学になると好きな言語を使う学校を自由に選べます。(そう、選びます。カナダで入学試験はありません。入学するのは簡単で、卒業するのは難しいです。)

 

ー言語学習ー

ケベック州の子供は日本の子供のように小学校一年から英語を勉強します。私が子供だった頃は4年からでした。英語を使う機会があまりなかったのでなかなか上手になりませんでした。今は英語を利用するインターネットサイトやテレビゲームが多いので若い子たちの英語能力は昔よりいいかもしれません。

 

英語系カナダでは第二外国語としてフランス語を学びます。同じく、使う機会がほとんどないので16年間勉強してもなかなか話せません。結局、若い人たちのなかでは個人的に言語学に興味がない限り、カナダの公用語をふたつ話せる人は少ないです。フランス語を話せる英語系カナダ人は特に珍しいです。(基本的に、ケベック州に近い州の方のフランス語能力はより高いです。)

 

ー職業ー

厳密に言えば、カナダの連邦政府の公務員になるためには、公用語をふたつ話せなければなりません。ところが実は上手にふたつを使える公務員は少ないです。それで、政府が公務員のために、無料で、言語学習クラスを行なっています。しかも、勤務時間中です!カナダの州の中では、ニューブランズウィック州だけは珍しく、州政府の公務員になるためにも、二つの言語の能力が必要です。

 

基本的に、ケベックで就職活動をするなら、英語をある程度話せないと仕事は見つかりにくいです、特に都会では。でも地方に行くとケベック人の英語能力が急に落ちます。なので、観光関係の仕事でない限り話す必要がほとんどなくなります。英語系の州のカナダの仕事なら、フランス語を話す必要がほとんどないので話せなくても簡単に就職できます。もちろん、仕事の内容にもよります。(ケベック州の会社とビジネスの関係がある企業はフランス語を必要する可能性がより高いです。)

 

ーポップカルチャー

ケベックの文化を守るための規則や法律はいくつかあります。その中の一つはラジオやテレビでのフランス語系と英語系のメディアの放送の割合の規則です。割合が何パーセントかがよくわからないですが、80%くらいの放送はフランス語でないとだめです。だから、私が子供の時観た番組と夫が観た番組が全然違います。ケベック州でプロデュースされた子供向けの番組がありましたが、ほとんど観ていたのはフランスからの輸入でした。その中で、90%以上はフランス語に訳された日本のアニメでした。私の母は子供の時ウルトラマンや魔法使いサリーのフランス語吹き替え版を観ていました。私はベルバラや太陽の子エステバンを観ていました。もちろん、日本の番組だと知りませんでした。(こんなに日本が好きになったのは幼い頃にこの経験があったからかもしれませんね。)もちろん英語のチャンネルはありました。カナダのNHKはCBCと呼ばれて、英語とフランス語のチャンネルがあります。そしてすぐ隣にあるアメリカのチャンネルの無料放送も観れていました。アメリカのアニメを観たのは覚えていますが、英語が理解出なかったのであまり興味がありませんでした。セサミストリートは一番人気でした。今の子供達はテレビ番組を観るより、YoutubeやDisney+を使っているので、コンテンツの言語を自由に選ぶことができます。そこはケベック州の政府の手は届きません。

 

キッコーマン醤油の仏英ラベル。

 

ー買い物ー

カナダでは何を買ってもラベルや説明書に英語とフランス語が載っています。初めて英語系の週に引っ越した時はびっくりしました。ケベック州の法律だと思っていましたが実は全国の法律でした。それで色々な海外企業はカナダのマーケットに入りたくても入りません。ラベルを翻訳する予算の余裕があっても、言語をラベルにもう一つ載せるためデザインそのものを変える必要があるのは珍しくないです。それで諦める企業が多いです。なのでたまにカナダ人は個人的にアメリカから欲しいもの輸入しなければなりません。(カナダドルが弱いし、輸入税がかかるし。。。面倒臭いです。)ラベルを翻訳しても、たまに笑える間違いがあります。日本ではEngrishと呼ばれている変な英訳があるようにカナダでは変な仏訳や英訳があります。

アメリカ輸入ブラックベリーの間違った仏訳。

英語:食べる前に洗ってください 

フランス語:食べる前にシャワーを浴びてください

 

今はグローバル化のおかげで(せいで?)変わりましたが、昔のケベック州の店やブランドはほとんどローカルでした。とてもいいことだったと思います。今営業するケベックのチェーン店の親会社はだいたい海外の系列ですが最近は地元の小さい店が増えていますのでまだ望みがあります。

 

ちなみに、英語系カナダにはセブンイレブンやサークルKがありますがケベック州にはありません。地元のチェーンしかありません。それで初めて日本へ行った時、セブンやファミマは日本のブランドだと思っていました。(どうしてコンビニの名前に英語を使うのかは疑問に思っていました。)2014年ブリティッシュコロンビア州に引っ越ししてセブンを見て初めてアメリカのチェーンだとやっとわかりました。(カナダのセブンの食べ物はまずいです。トイレも汚いです。お勧めはしません。)

 

ー最後にー

私にとって、公用語がふたつあることは当たり前です。最初は公用語が一つしかない日本のことはとても不思議に感じました。同時に標識に日本語とローマ字が載っているのは予想外でした。やはり、海外に行かないと自分の国の文化が基準だと思ってしまいますね。カナダの公用語について質問があれば、ぜひコメントにシェアーしてください。

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This column was published by the author in their personal capacity.
The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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Canada 101

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