大学入試の漢文で、「なんとなく内容はわかるのに、選択肢を選ぶ段階で迷ってしまう」という経験をした人は多いのではないでしょうか。
特に共通テストや私立大学のマーク式問題では、本文の内容を完全に理解していなくても、接続語を手がかりに正答を導ける場合があります。
実は、接続語は漢文読解の“羅針盤”のような存在です。
本文の流れを示し、筆者の意図や論理の転換点を教えてくれるからです。
今回は、「選択肢を絞る際にチェックすべき接続語の種類と、その読み取り方」について、具体例を交えながら解説します。
現代文や英語でも役立つ“論理の読み方”のトレーニングにもなる内容です。
1. 接続語が「選択肢判断のカギ」になる理由
漢文の読解問題では、設問にこうしたタイプがよくあります。
「本文の内容と合致するものを選べ」
「筆者の主張として最も適当なものを選べ」
このような問題で、本文全体を完全に理解していなくても、論理の方向性をつかめば正解に近づくことができます。
たとえば、「しかし」「ゆえに」「また」「すなわち」などの接続語がどの位置にあるかを確認することで、
-
どこで話が反転しているのか
-
どこから筆者の結論が示されるのか
が見えてきます。
つまり、接続語を読む=文章の流れをつかむこと。
これは、選択肢を「消去法」で絞る際の強力な判断基準になるのです。
2. 接続語の種類を理解しよう
漢文の接続語には、現代語で言う「論理マーカー」としての働きがあります。
主に次の4タイプを押さえておきましょう。
これらの語が現れたら、文の前後関係に注目しましょう。
たとえば「然(しかれども)」が出たら、その前と後で主張が逆転している可能性が高いです。
逆に「故(ゆえに)」が出たら、前の文が原因・理由、後の文が結果になります。
3. 「逆接」は筆者の主張を見抜く最重要ポイント
漢文の論説文では、「逆接」が筆者の意見を示すサインになっていることが多いです。
たとえば次のような文を見てみましょう。
人皆利を好む、然君子は義を好む。
(人はみな利益を好むが、君子は正義を好む。)
この場合、「然(しかれども)」以降が筆者の真意です。
つまり、筆者は「利益よりも義を重んじるべきだ」と考えている。
選択肢で「筆者は利益を肯定している」と書かれていれば、それは誤りと判断できます。
逆接の後こそが筆者の立場。これは漢文読解で極めて重要なルールです。
4. 「順接」は結論を示すサイン
「故」「是以」などの接続語が出たら、それ以降の文が“結論”である可能性が高いです。
君子学に志す、故日に省みて身を修む。
(君子は学問を志す。だから日々自分を省みて身を修めるのだ。)
この「故」以降の文こそ、筆者の考え方を端的に表しています。
設問で「筆者の主張」「最も言いたいこと」を問われた場合、
「故」や「是以」以降の文を中心に内容を確認するのがポイントです。
また、「~所以~(~ゆえん~)」という形も因果関係を示します。
「これが~の理由である」といった文が出たら、それが本文の“結論の根拠”になります。
5. 「並列・添加」は情報整理に使う
「且」「又」「亦」などは、同列の内容を並べる役割があります。
これらの語が出てきたら、「同じ方向の話が続いている」と判断しましょう。
君子は仁に安んじ、又義を楽しむ。
この場合、前後の内容はどちらも“君子の徳”を述べています。
設問で「君子の特徴として正しいものをすべて選べ」といった問題が出たら、
「且」「又」「亦」などを目印に、同列の要素をまとめて整理するのが有効です。
逆に、「また」という語があるからといって話の方向が変わるわけではありません。
ここで内容の転換を読み違えると、選択肢の消去でミスをしやすくなります。
6. 「転換・提示」は話題の切り替えに注目
「乃」「則」「即」「夫」「蓋」などは、文の展開を切り替えるサインです。
学ばずして思ふは則ち罔(くら)し、思はずして学ぶは則ち殆(あやう)し。
(学ばずに思うのは見当違いであり、思わずに学ぶのも危険である。)
この「則(すなわち)」は条件の結果を示しています。
前後の文を対応させることで、筆者の対比構造を読み取ることができます。
また、「夫(そ)」は新しい話題や結論の導入に使われます。
夫れ学は以て身を立つるの本なり。
(そもそも学問とは、自立の基礎である。)
このように「夫(そ)」が出てきたら、“ここから筆者の主張が始まる”と判断できます。
7. 接続語を使った選択肢の「消去法」実践例
では、実際に接続語を手がかりに選択肢を絞る例を見てみましょう。
本文:
人の過を言ふは易し、然れども己の過を改むるは難し。
設問:
筆者の考えに最も近いものを選べ。
A. 他人の過ちを指摘することは悪い。
B. 自分の欠点を直すことは難しい。
C. 人の過ちを言うことが最も大切だ。
D. 過ちは直すよりも責めるべきだ。
→ 「然れども」が逆接であるため、「後半」が筆者の主張部分。
したがって正解は B。
このように、接続語の前後関係を押さえるだけで、内容を完全に理解しなくても正答に近づけます。
8. よく出る接続語一覧(頻出表現まとめ)
この表を覚えるというよりも、問題演習の中で使われ方を意識することが大切です。
本文中の接続語を見つけたら、必ず線を引いて論理関係を整理するクセをつけましょう。
9. 接続語の“見落とし”が生む典型的ミス
接続語を意識しないと、次のようなミスをしがちです。
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「然れども」を無視して、前半の内容を筆者の意見と誤解する
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「故」以降の結論を読み飛ばして、根拠部分だけを拾う
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「又」「且」を転換と誤読し、内容の方向性を誤る
これらはすべて、選択肢の正誤判断を狂わせます。
逆に、接続語の位置に注目すれば、「どの部分が本音で、どこが説明か」を見抜けるようになります。
10. 接続語を読むことは、「筆者の思考を読む」こと
接続語を意識した読解は、単なるテクニックではありません。
それは、筆者の思考の流れをたどることにほかなりません。
漢文の作者も、現代の論説文の筆者と同じように、
「反対意見を述べ、そこから自分の主張へと展開する」
「理由を挙げ、結論を導く」
という論理構成で文章を書いています。
その論理の“道しるべ”が接続語なのです。
11. まとめ:選択肢で迷ったら「接続語の後を読む」
接続語を読む力をつければ、本文理解と設問処理の両方で大きな武器になります。
ポイントまとめ:
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「然」「然れども」などの逆接後が筆者の主張。
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「故」「是以」以降が結論部分。
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「且」「又」は同列の内容を並べるサイン。
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「乃」「則」「夫」は話の転換や新展開を示す。
選択肢で迷ったら、まず本文の接続語を探し、その後半の内容に注目しましょう。
それだけで、正答率が大きく上がります。
接続語は、小手先のテクニックではなく、読解の本質に通じる力。
今日から本文中に必ず印をつけて、「論理を読む目」を鍛えていきましょう。
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