古文の中でも多くの受験生がつまずくポイントが「和歌の読解」です。
現代語訳が難しいだけでなく、和歌特有の表現法――とくに「枕詞(まくらことば)」や「序詞(じょことば)」の理解が不十分だと、問題文全体の意味を取り違えてしまうこともあります。
しかし、これらをしっかり整理して覚えれば、古文読解の得点力が一気に上がります。今回は、大学入試で頻出の「枕詞」と「序詞」を体系的に理解し、得点につなげる勉強法を紹介します。
1.枕詞とは?その本質を理解しよう
まず、「枕詞」は古文における“修飾語”の一種です。
ある特定の言葉(名詞)に必ずくっつく決まった形の言葉で、音や意味の連想をもとに結びついています。
たとえば有名なものに、
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あしひきの → 山
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たらちねの → 母
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しろたへの → 衣・袖
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あかねさす → 日・昼・紫
などがあります。
これらは現代語訳でいちいち意味をとる必要はありません。
なぜなら、枕詞は「意味」というより“修飾の響き”を持たせる表現だからです。
つまり、「あしひきの山」というのは「山」を美しく響かせるための“飾り”なのです。
古代の人々は、音の調べや語感を大切にしました。
そのため、和歌においては「意味+響き」で情感を伝えることが重要でした。
この“音の文化”を意識することで、枕詞の存在意義が理解しやすくなります。
2.枕詞を効率的に覚えるコツ
枕詞を丸暗記しようとする受験生が多いですが、それでは定着しません。
ポイントは、「連想」で覚えることです。
たとえば次のように関連づけて覚えると効果的です。
このように、語源やイメージと一緒に覚えることで、忘れにくくなります。
さらに、共通テストや国公立二次試験では、「この枕詞が何にかかるか」を問う設問が多いです。
したがって、単に“意味”ではなく、“どの名詞とセットで出てくるか”を覚えることが得点のカギになります。
3.序詞とは? 枕詞との違いを整理!
「序詞」は、枕詞よりも少し長い修飾表現で、ある語を導くための“意味のつながり”を持つ言葉のまとまりです。
枕詞が「決まり文句」なのに対し、序詞はその場の詩的連想で作られます。
たとえば次のような例があります。
君が行く道の長手を繰りたたね焼き滅ぼさむ天の火もがも
(万葉集)
この和歌では、「道の長手を繰りたたね焼き滅ぼさむ」が「恋の炎」を導く序詞になっています。
“道の長さ”と“恋の長さ”を重ね、焦がれる心情を表しているのです。
つまり、序詞=詩的な比喩の導入。
枕詞が機械的に名詞にくっつくのに対して、序詞は「意味の流れ」を作る役割を持ちます。
4.枕詞・序詞がなぜ入試で出るのか?
大学入試では、和歌の読解問題がしばしば出題されます。
その際、出題者は「語の修飾関係」や「比喩の構造」を理解できているかを見ています。
つまり、枕詞や序詞は和歌の情景・感情を読み取る手がかりなのです。
たとえば次のような設問が考えられます。
問:下線部「あしひきの山」に含まれる修辞上の効果として最も適当なものを選べ。
このような場合、「山」を美しく、荘厳に響かせる効果がある、という選択肢が正解になります。
つまり、枕詞は情感表現の一部として機能していることを理解しておく必要があります。
また、序詞の場合は、「どの語を導いているか」を特定できるかがポイントです。
意味の流れをたどり、「ここからこの言葉につながる」と論理的に考える習慣をつけましょう。
5.効果的な勉強法3ステップ
枕詞・序詞の学習は、次の3ステップで進めると効率的です。
ステップ①:基礎の整理
まずは、教科書や参考書に載っている代表的な枕詞20個程度をリスト化しましょう。
ノートにまとめるときは、「枕詞」「意味」「かかる言葉」「由来」の4項目で整理するのがおすすめです。
この段階では、“完璧に覚えよう”とせず、全体像をつかむことが目的です。
ステップ②:実際の和歌で確認
暗記しただけでは意味が定着しません。
古典の本文(『万葉集』『古今和歌集』など)や、学校の教科書の和歌を使って、実際に「枕詞・序詞を探す練習」をします。
マーカーで印をつけ、「この言葉が何にかかっているか」を確認するだけでも十分です。
自分で線を引く行為が、理解を深める最短ルートです。
ステップ③:音読でリズムを体感
和歌は音の文学です。
枕詞・序詞の魅力は、意味だけでなく“音の響き”にあります。
声に出して読んでみることで、リズムの感覚が自然と身につき、暗記もしやすくなります。
また、共通テストでは現代語訳問題に加えて、文学的効果を問う設問もあるため、音感を意識することが有利に働きます。
6.保護者の方へ:和歌学習のサポートポイント
保護者の方から「古文の和歌なんて今の入試に関係あるの?」という声を聞くことがあります。
しかし、実際の共通テストや国公立二次試験では、和歌読解は毎年のように出題されています。
特に近年は、「文化的背景」や「表現技法の理解」を問う傾向が強まっています。
つまり、和歌の理解は、単なる暗記科目ではなく日本語運用力を鍛えるトレーニングでもあるのです。
お子さんが和歌に苦手意識を持っている場合は、
「昔の人も自分の気持ちを歌にしていたんだよ」と親しみやすく声をかけてあげてください。
感情を言葉にするという点では、現代のSNS文化とも通じるものがあります。
古典=過去の遺物ではなく、「人の気持ちを表す文学」として接する姿勢が、学びのモチベーションを高めます。
7.まとめ:枕詞・序詞を制する者が和歌を制す!
枕詞と序詞は、古文の和歌を読むうえで避けて通れない重要表現です。
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枕詞は「特定の名詞を美しく修飾する言葉」
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序詞は「意味のつながりを持った導入句」
この2つをしっかり理解すれば、和歌の情景描写や作者の心情を的確に読み取れるようになります。
大学入試では、“単語の意味”を覚えるだけでなく、“表現の効果”を説明できるかが問われます。
だからこそ、今のうちに枕詞・序詞を整理し、音読・練習を重ねておくことが得点アップへの近道です。
和歌の世界は、一度わかると面白いものです。
「言葉の美しさ」を感じながら、楽しく学習を進めていきましょう。
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