古文の文法の中でも、特に多くの受験生がつまずくポイント――それが「助動詞」です。
「意味が多すぎて覚えられない」「接続がややこしくて混乱する」「活用表が頭に入らない」……そんな悩みを抱えている高校生は少なくありません。
しかし、助動詞は一度しっかり理解し、覚えてしまえば、古文の読解力が一気に上がる非常に重要な分野です。しかも、助動詞の数は限られており、覚えるべき情報も決まっています。つまり、やり方さえ間違えなければ、最短ルートで確実に得点源に変えることができるのです。
この記事では、古文助動詞の意味と接続を「一気に」「効率的に」覚えるための方法を、受験生とその保護者の方に向けてわかりやすく解説します。
なぜ助動詞が大切なのか?
助動詞は、古文の世界で「時制」「推量」「打消」「受身」「尊敬」など、文の内容を決定づける重要な要素です。たとえば、たった一文字の「けり」が過去を示すのか、詠嘆を表すのかによって、本文の読解や設問の正解が大きく変わることもあります。
さらに、助動詞は頻出語句の宝庫です。入試に出る古文文法問題の多くは助動詞がらみで、読解問題でも設問中に「この助動詞の意味は?」と問われることがよくあります。
だからこそ、早めにマスターしておきたい分野なのです。
覚えるべき助動詞は「35個前後」だけ
「助動詞は多くて無理…」と思っている人もいるかもしれませんが、実際に入試で覚えておくべき助動詞の種類は30~35個程度。これは単語帳1冊分にも満たない量です。
また、すべての助動詞は以下の5項目で構成されます。
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意味(例:過去、打消、推量)
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接続(例:未然形、連用形)
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活用形(例:れ・れ・る・るる・るれ・れよ)
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識別のヒント(文中での見分け方)
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特徴的な用法(特定の語にしかつかないなど)
このうち、「意味」と「接続」をまず優先的に覚えることで、古文読解力は劇的に上がります。
助動詞を一気に覚える3つのステップ
ステップ1:助動詞を「グループ」で覚える
助動詞は、意味や接続の特徴によってグループ化すると、暗記効率が大幅にアップします。以下のように整理して覚えてみましょう。
■ 未然形接続(未来・推量・打消・受身など)
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る・らる:受身・尊敬・自発・可能
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す・さす・しむ:使役・尊敬
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ず:打消
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む・むず:推量・意志・勧誘・仮定・婉曲
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じ:打消推量
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まし:反実仮想・ためらい・希望
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まほし:希望
■ 連用形接続(過去・完了・存続など)
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けり:過去・詠嘆
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つ・ぬ:完了・強意
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たり(連用形接続):完了・存続
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たし:希望
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けむ:過去推量・過去の原因推量・伝聞・婉曲
■ 終止形接続(現在推量・当然・命令など)
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べし:推量・意志・可能・当然・命令・適当
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まじ:べしの打消バージョン
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らむ:現在推量・原因推量・伝聞・婉曲
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らし:推定
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めり:推定・婉曲
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なり:伝聞・推定
■ 体言・連体形接続
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なり(断定)・たり(断定):断定
このように、接続によって分類して覚えると、記憶に残りやすくなります。
ステップ2:意味を「イメージ化」+「対比」で覚える
助動詞の意味は、視覚的・感覚的にイメージ化すると覚えやすくなります。また、「似た意味」「反対の意味」を並べて覚えると混乱しにくくなります。
■ 例1:推量系助動詞の対比
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む(未来推量) ←→ けむ(過去推量)
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らむ(現在推量) ←→ らし・めり(推定)
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べし(当然・推量) ←→ まじ(べしの打消)
■ 例2:完了系助動詞の違い
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つ・ぬ:強意の完了(「きっと〜した」)
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たり・り:状態の継続(「〜している」)
イラストや図で「時制の流れ」や「意味の位置づけ」を確認すると、記憶に残りやすくなります。
ステップ3:「語呂合わせ」で接続と意味を同時にインプット
助動詞の接続は、「語呂合わせ」で覚えると効率的です。以下にいくつか例を挙げます。
■ 未然形接続の語呂:「サミシムズ、ムズジマシマホシ」
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サ(さす)ミ(未然)シ(しむ)ムズ(むず)ジ(じ)マシ(まし)マホシ(まほし)
→これらはすべて未然形に接続!
■ 連用形接続の語呂:「けっこうつぬたりたし」
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け(けり)つ(つ)ぬ(ぬ)たり(完了のたり)たし(希望)
→連用形に接続する助動詞群
■ 終止形接続の語呂:「べまらめらめな」
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べし、まじ、らむ、らし、めり、なり(伝聞)
→すべて終止形接続!
このように、リズムよく唱えられる語呂合わせは、移動中や休憩中でも口ずさむことができ、記憶の定着に役立ちます。
暗記後の実践練習がカギ
意味と接続を覚えたら、それを使って「読める」ようになることが次のステップです。
● 活用表を使って、動詞+助動詞の組み合わせ練習
例:
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「書かる」→書く(四段活用)の未然形+助動詞「る」
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「食べしむ」→食べ(下一段)の未然形+使役「しむ」
● 短文演習で「文中の助動詞の意味と接続」を確認
学校の教科書や市販の問題集で、1文ずつ文法確認することが大切です。
→「この助動詞はなぜこの意味?」「なぜこの形に接続してるのか?」を毎回確認!
保護者の方へ:助動詞の習得は早めが勝負です
古典文法の中でも助動詞は、早い段階で覚えれば覚えるほど読解に余裕が出てきます。学校の授業だけで理解が追いつかない生徒は多く、特に中堅〜難関大を目指す場合、高2の終わりまでに助動詞をマスターしておくことが理想的です。
「古文はなんとなく読んでるだけ」という段階から、「文法から意味を組み立てられる」ようになることで、読解力も成績も大きく伸びます。家庭でもぜひ、語呂合わせや練習プリントなどを活用してサポートしてあげてください。
まとめ:助動詞は“丸ごとセット”で攻略せよ
古文の助動詞は、意味・接続・活用・識別が「セット」で問われる分野です。逆に言えば、それをセットで覚えてしまえば、「文法問題にも読解にも強くなる」という非常にコスパの良いテーマでもあります。
今回紹介した
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接続ごとのグループ化
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対比とイメージによる意味理解
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語呂合わせの暗記法
を活用し、短期間で一気に助動詞を自分の武器にしていきましょう。
助動詞をマスターできれば、古文は「なんとなく読む」段階から、「論理的に読める」科目へと変わります。ぜひ、早めに取り組み、得点源として活用してください。
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