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映画(2回目)

中村勇太

隙間時間で映画を見てきました。(2回目)

高校生の頃から古田新太さんが好きで、あのシーンをもう一度観たい!配信まで待てない。映画館で見たい!というノリで2回目です。

 

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一応この映画の主人公は、ベートーヴェンの秘書だった人、シンドラーです。

この人の書いたベートーヴェンの伝記を読まない限り、クラシック音楽関係者でも「どなた?」と思う人がいると思いますが、意外と馴染みのある教材と関係されている人です。

コールユーブンゲン。僕もたまに教材として使いますが、このコールユーブンゲンの著者ヴェルナーの先生の一人がシンドラーです。

話を戻して、伝記、逸話のこと。
楽譜があれば、演奏家は演奏することができます。

じゃあ、伝記とか逸話とか別にいいじゃないの!と思う人もいるかもしれません。

でも、曲の中にこの人のこういう人柄が出てるのかも!というイメージを膨らませたくなる弾き手もいます。

僕自身は伝記とかは読みませんが、手紙や日記、自筆譜は見ます。

この曲は〜〜〜とか、書いてあるとイメージは膨らみますし、そのリズムの意志というものが作曲家と共有できる気がします。
例えば、ヨアヒムが書いたベートーヴェンの協奏曲のカデンツァは「じゃん、じゃん、じゃん、じゃん、じゃ〜〜〜ん!」という一節があるのですが、かなり昔のN響アワーでシェリングが「ヨアヒムの書いた手紙に、運命の鼓動として印象付けたかった、と書いています」(朧げな記憶です)と話していたことがあります。

また、自筆譜は、作曲家自身が頭の中でドレミを言いながら書いているので、その筆のノリとか流れをみると、イメージが膨らむこともあります。

1回だけ、書き込みや校訂の一切ない自筆譜のコピー(バッハのソナタとパルティータ:インターナショナル社のガラミアン版についています)を譜面台において弾いたことがあります。10巻以外何の根拠もありませんが、作曲家が書いている流れに乗って頭の中で鳴らせているのか?いつもと雰囲気が違ったと思います。

また、教わるときも、教えるときも「このテーマはこういうイメージ」と言葉にすることがあります。
その言葉が、作曲家自身が口にしたり書いたりしたことかどうか、は根拠、論拠としての重要度が変わると思います。
作曲家の言葉か、その曲のトラディションを受け継いできた過去の演奏家たちの言葉か。弾く人にインスピレーションを与えてくれるなら何でもいいんじゃない?という部分と、時代が違えども変わらない人間の感情の面で、作曲家と少しでも音の質感を共有したいという気持ちの部分。

僕自身は、(個人的意見ですが)日本のやすっぽい現代アートにありがちな「解釈の結果、行き着く先が政治的意図や社会的主張になるような、予定調和で設計されているような作品」が嫌いです。

シンドラーのやってしまっている(と考えられている)ノートの書き換えや追記、破棄はそういうレベルとは違って、「楽聖」を作り上げてしまった、もっともらしい曲のインスピレーションの元を固定してしまった、というような話です。

この映画のいいところは、そういう「人としてどうか」という考えを投げかける部分が重すぎず、(語弊があるかもしれませんが)「こんなことがあったんだよね」とはじまり、おわっていく向田邦子ドラマのようなところだと個人的には思いました。

個人的になんども見たくなるのは、古田さんの視線、表情、足取りだけでグッと掴まれるところです。というわけで明日も隙間時間に見に行きます(笑)

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本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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