古文の読解がなかなか進まない……そんな受験生の声でよく聞くのが、「文の構造がつかめない」「どこが主語か分からない」という悩み。
この原因のひとつとして、多くの生徒がつまずきやすい文法事項、「係り結び(かかりむすび)」の理解不足が挙げられます。
係り結びとは、古文独特の文法構造のひとつで、現代語には存在しないため、慣れないうちはピンと来ません。しかし、この係り結びをしっかり理解すると、古文の読み方が驚くほどクリアになり、記述・選択問題の正答率も一気に上がります。
この記事では、
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係り結びとは何か?
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なぜ受験古文で重要なのか?
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読解にどう活かせるのか?
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暗記のコツとトレーニング法
を丁寧に解説し、受験生でもスラスラ読める古文力を身につけるサポートをします。
係り結びとは?基本のしくみを理解しよう
まず、係り結びの定義を一言でいうと、
「文中のある特定の語(係助詞)が出てきたら、文末の活用形が変化する」という古文独特の文法ルールです。
例えば以下のような文があります。
花こそ咲け。
この「こそ」は係助詞です。現代語でいう「〜こそ〜が〜だ」という強調のニュアンスを持っています。この「こそ」が使われることで、通常なら「咲く」となるところが、文末が「已然形(咲け)」に変化しているのです。
このように、「係助詞」+「結び(活用形の変化)」のセットで文構造が決まるルール、それが「係り結び」です。
係り結びの種類を覚える!5つの係助詞とその結び形
古文で出てくる代表的な係助詞と、それに対応する「結び(文末の活用形)」の組み合わせを覚える必要があります。以下が受験で必ず押さえておきたい5パターンです。
特に、「こそ」だけは結びが已然形になる点が重要で、これをきちんと覚えておくことで読解上のズレを防げます。
受験生がつまずく「係り結び」の3大パターン
① 文末の活用形と係助詞の対応が取れていない
多くの生徒が見落とすのが、「係助詞が出てきたら、必ず文末の動詞・助動詞に注意を向ける必要がある」という点です。
たとえば、
人の心ぞ移ろひやすき。
この場合、「ぞ」があるので、結びは連体形になる必要があります。「移ろひやすき」は形容詞「移ろひやすし」の連体形。ここでしっかり一致していると、文が整って読めるのです。
間違えて「移ろひやすし」と終止形で書いてしまうと、係り結びが成立しない=減点対象になります。
② 係助詞を見逃して、文構造を誤解する
古文では、係助詞が文中の途中に出てくることが多いため、注意していないと見落としがちです。
たとえば、
この歌こそ優れたれ。
「こそ」があれば、「たれ」は動詞「たり」の已然形だと気づく必要があります。このとき、「こそ〜たれ」となることで文全体が「こそ強調構文」になっているとわかります。
文末だけ見て判断するのではなく、文中で係助詞を見つけ、文末と照合する癖をつけましょう。
③ こそ+已然形→逆接を読み取れない
「こそ」が使われると、文の後半が逆接になるケースが多くあります。
たとえば、
この花こそ咲け、風に散りぬ。
この文の意味は、「この花は咲いたのだが、風で散ってしまった。」というように、**「〜けれども」「〜のに」**といった逆接の意味合いが生まれます。
係り結びにはただの文法ルール以上に、「意味上のつながりを読み取るヒント」も含まれているのです。
読解で使える「係り結び」の実践テクニック
係り結びを知識として覚えるだけではなく、読解に活かすためには実践練習が必要です。以下の手順で学習してみましょう。
ステップ①:文章を読んだらまず係助詞を探す
文中に「ぞ・なむ・こそ・や・か・は(も)」が出てきたら、蛍光ペンや下線などでマークする癖をつけましょう。特に試験中は、文構造の道しるべとして役立ちます。
ステップ②:文末の活用形をチェック
係助詞があると気づいたら、その文の文末に注目し、「連体形か已然形か」を確認します。
ステップ③:文の意味関係(強調・対比・疑問・逆接)を読み取る
係り結びは単なる形式ではなく、**「何を強調しているのか」「何が対比されているのか」**を読み解くカギです。たとえば「こそ〜已然形」のパターンなら、「逆接で文が続くかも?」と予測しながら読むと、設問の選択肢にも対応しやすくなります。
暗記のコツ:「語呂合わせ」で係助詞を覚える
語呂合わせはシンプルですが非常に効果的です。以下は係助詞と結びをセットで覚えるための語呂例です。
「は・も・ぞ・なむ・や・か」→ れんたいたいけー(連体形系)
「こそ」→いぜんけー(已然形)で逆接注意!
また、学校でよく紹介される語呂にこんなものもあります:
「ぞ・なむ・や・か・こそ、文末変えて読むのコツ!」
楽しみながら、繰り返し口に出して暗記すると定着が早まります。
保護者の方へ:古文における係り結びの重要性と家庭学習のヒント
古文というと「昔の言葉で難しい」という印象をお持ちの保護者の方も多いかもしれません。しかし、係り結びのような基本ルールをしっかり押さえることで、お子さまの古文読解力は大きく飛躍します。
ご家庭でできるサポートとしては、
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教科書や問題集で「こそ」「ぞ」などの係助詞を一緒に探してみる
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古文の文章を音読し、リズム感をつかませる
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テストの前に、係助詞の暗記クイズを出してあげる
といったかたちで、日常に取り入れてみるのがおすすめです。
まとめ:係り結びは古文読解の「地図」
係り結びは、文法事項のひとつではありますが、単なる暗記項目にとどまらず、読解の道しるべとして非常に重要な役割を果たします。
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「係助詞を見つける」
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「結びを確認する」
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「意味上の関係性(強調・逆接など)を読み取る」
という3ステップを常に意識することで、古文読解はぐんとスムーズになります。
受験生の皆さん、古文に苦手意識があるなら、まずは「係り結び」から理解してみてください。それだけで、文の流れが読めるようになり、点数にも直結してきます。
焦らず、着実に、古文の“クセ”を味方につけましょう。
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