みなさんの国では、犬にかまれたらどうしますか?
多くの国では、すぐに病院へ行ってワクチンを受けると思います。なぜなら、「狂犬病(きょうけんびょう:Rabies)」というとてもこわい病気があるからです。
狂犬病は、犬やコウモリなどの動物にかまれることでウイルスが体に入り、発病すると、ほとんどの人が助かりません。高い熱が出て、のどが痛くなり、水を飲むのもつらくなります。そして、やがて体が動かなくなり、100%死に至ります。
この病気は、アジア・アフリカ・南アメリカなど世界の多くの国で今も見られます。毎年5万人以上の人が亡くなっているといわれています。
ところが、日本ではこの病気はほとんど見られません。日本では1957年から、国内での狂犬病の感染は1件もありません。犬にワクチンを打つことが法律で決められていて、野良犬も少ないため、感染のリスクが非常に低いのです。そのため、日本では「犬にかまれても病院に行かなくてもいい」と考える人もいます。多くの国の人はおどろくかもしれません。
また、狂犬病と同じように、世界ではよくあるが、日本では見られない病気に、マラリア(Malaria)があります。
マラリアは、感染した蚊(か)にさされることでうつる病気です。高い熱や頭痛、体のだるさが何日も続き、重症になると命にかかわることもあります。アフリカ、南アジア、東南アジアなどのあたたかい地域では特に多く見られます。そうした国々では、ワクチンや薬、防虫ネットなどを使って、日常的にマラリアを予防しています。
しかし、日本にはマラリアを運ぶ蚊がいないため、自然に感染することはありません。日本でマラリアになるのは、海外で感染して帰国した人や来た人だけです。ですから、日本ではマラリアはあまり知られておらず、「外国の病気」として考えられています。
このように、世界では当たり前のようにある病気でも、日本ではめったに見られないことがあります。
逆に、日本ではよくあるけれど、外国ではあまり知られていない病気もあります。その一つが、「花粉症(かふんしょう)」です。
花粉症は、スギやヒノキなどの木の花粉にアレルギー反応を起こして、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状が出る病気です。日本では春になると、この病気に苦しむ人がたくさんいます。特に都会では花粉の量が多く、毎年2月から4月ごろになると、マスクや目薬を使う人が急に増えます。
しかし、スギやヒノキは日本にとても多い木であり、ほかの国にはあまりありません。ですから、外国人にとっては「花粉症」という病気自体があまり知られていないのです。ある外国人は「日本に来てから花粉症になった」「春にマスクをしている人が多くてびっくりした」と話していました。
このように、病気には国や地域によるちがいがあります。ある国では「当たり前」の病気が、別の国では「聞いたことがない」病気かもしれません。そして、病気の考え方や対策のしかたも国によってちがいます。
これから日本で生活する人は、日本に多い病気や、逆に日本では見られない病気のことも知っておくと、安心して生活できます。そして、自分の国でよくある病気について、日本の人に説明してあげるのもよいことです。
病気もまた、「文化のちがい」の一つかもしれません。おたがいの違いを知り、理解し合うことが大切ですだと思います。
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語彙リスト
- 狂犬病(きょうけんびょう) :犬などにかまれてうつる、死ぬこともある病気 rabies
- 野良犬(のらいぬ) :飼い主がいない犬 stray dog
- 感染(かんせん) :ウイルスや病気が人にうつること infection
- マラリア :蚊にさされてかかる病気 malaria
- 花粉症(かふんしょう)花粉でくしゃみや鼻水が出る病気 hay fever / pollen allergy
- 花粉(かふん) 花から飛ぶ小さい粉 pollen
- アレルギー :特定の食べ物や物に体が反応すること allergy
- あたりまえ :だれでもそう思う、ふつうのこと natural / common
- 特有(とくゆう) :それにだけ特別にあること unique / characteristic
- ・防虫ネット(ぼうちゅうネット) :蚊などの虫が入らないように使うネット mosquito net
- ・命にかかわる(いのちにかかわる) :死ぬこともある、たいへんきけんなこと life-threatening
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