「漢文は高3からで間に合う」と言われることがあります。確かに、他の科目に比べて学習範囲が狭く、暗記事項も限られているため、短期間で得点を伸ばしやすい科目ではあります。
しかし、これは「漢文を捨ててよい」という意味ではありません。むしろ、高1・高2の段階で基礎を固めておけば、現代文・古文・小論文との連携がとれ、国語全体の成績を底上げできる大きな武器になります。
本記事では、大学受験を見据えながら、漢文を高1・高2のうちから効率よく学ぶ方法を丁寧に解説していきます。学校の授業では扱いきれない「自学自習のポイント」や「漢文を使って思考力を鍛える方法」もご紹介するので、保護者の方にもぜひお読みいただきたい内容です。
■ なぜ漢文は高1・高2から始めるべきなのか?
1.「国語の中で最も得点差がつきやすい」科目だから
共通テストや難関私大の入試では、選択問題で古文や漢文がセットで出題されることが多く、短時間で正確に解けるかどうかが合否を左右するポイントになります。
漢文は基本事項を押さえておけば、安定して7~8割以上が取れる構成です。逆に言えば、漢文でミスが続くと、全体の得点バランスが崩れてしまいます。早いうちから「得点源」に変えておくことで、他の教科や苦手科目に時間を割く余裕も生まれます。
2.「論理的な思考力」を身につける訓練になるから
漢文の読解では、「主語の補完」「指示語の内容把握」「因果・対比などの関係性の理解」が問われます。これは現代文や小論文にも通じる力であり、国語の本質的な読解力を育てるトレーニングにもなります。
漢字・文法・句法の暗記だけで終わらず、「文脈を追って構造をつかむ」読み方を身につけることで、入試全体の対応力が高まります。
■ 高1・高2でやっておくべき3つの柱
では、漢文を早期から学ぶ場合、どのようなステップで勉強を進めていけばよいのでしょうか。高1・高2で取り組んでおきたい3つの柱を紹介します。
【柱1】句法の「意味・型・用例」をセットで覚える
漢文の読解は、「句法(構文)」の理解が最重要です。よく出る句法をただ丸暗記するのではなく、使われ方のパターンと文構造の中での役割を理解することが必要です。
たとえば:
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使役形「使~(セ)ム」
意味:~に~させる
例文:使人速馬(人をして馬を速くせしむ) -
否定形「不常~」
意味:常には~せず
例文:不常勝(常には勝たず)
これらは教科書の文法欄に載っていることが多いですが、実際にどんな場面でどう使われているかを例文ごとに確認することで、応用が効くようになります。
おすすめ学習法:
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高校1・2年の間は「漢文句法ドリル」や「重要句形のまとめプリント」で反復練習
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学校の定期テストで出た句法をノートに整理して、毎回復習しておく
【柱2】「読み下し文」をスムーズに作るトレーニング
漢文の第一歩は、返り点と送り仮名をもとに正確な読み下し文を作ることです。読み下しができないと現代語訳も読解も成立しません。
基本のルール:
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レ点(一・二点)は後ろから読む
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一二点や上下点を使って語順を入れ替える
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送り仮名を正確に補い、活用形に注意する
練習素材の例:
學而時習之、不亦説乎。
→ 学びて時にこれを習ふ、またよろこばしからずや。
この作業を丁寧に繰り返すことで、「文構造を頭の中で組み立てる力」がつき、読解速度が格段に上がります。
おすすめトレーニング:
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短文でOKなので、毎日1問ずつ読み下し練習を継続する
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ノートに「書き下し→現代語訳→主語・述語・修飾語の関係」をセットでまとめる
【柱3】「現代語訳と設問演習」で実戦力を育てる
文法や読み下しに慣れてきたら、次は入試に向けた実戦的な読解演習にステップアップしましょう。
高1・高2で取り組むべきなのは、「漢文の文章を論理的に読んで、設問に答える」という練習です。特に共通テスト型の選択問題は、論理の読み取りと正解根拠の明確化が問われます。
取り組み方の例:
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共通テスト過去問の漢文パートだけを抜き出して演習
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現代語訳と選択肢の照らし合わせで「どこが根拠か」をメモする
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間違えた問題は「なぜそう読めなかったか」を自己分析
このような演習を重ねることで、本文構造と設問との対応関係を意識する力がつきます。
■ 学年別・漢文学習のステップ
高1のうちにやるべきこと
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句法・語彙のインプットを中心に習慣化
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週に1~2題の読み下し練習を積み重ねる
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定期テストを活用して理解の定着を図る
高2のうちにやるべきこと
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共通テスト形式の実戦問題に月1回取り組む
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長文読解に挑戦し、設問での「根拠探し」に慣れる
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小論文や現代文とも共通する「論理の読み方」を身につける
■ 保護者の方へ:漢文学習は時間管理の味方になります
漢文は他の教科に比べて短時間で成果が出やすく、**「成果が目に見えやすい科目」**です。これは、受験生にとって大きな自信につながります。
また、漢文の早期学習により、共通テスト直前に他教科に集中できる「時間的ゆとり」を確保できます。漢文の安定は、国語全体、さらには受験戦略全体の安定につながるのです。
家庭では、定期テスト前や長期休暇中に「1日15分の漢文学習タイム」を設けるだけでも効果があります。小さな習慣を積み上げていくことが、3年後の入試での安定につながります。
■ まとめ:漢文は「早く始めた人」が勝つ
漢文は、暗記と論理をバランスよく鍛えることで、安定した得点源に変えられる科目です。
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句法の意味と使い方を理解する
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読み下しと現代語訳で構造を把握する
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実戦問題で論理的読解をトレーニングする
これらを高1・高2のうちから少しずつ実行することで、高3になっても焦らず、自信を持って受験に臨めるようになります。
時間に余裕のある今こそ、将来の得点源を作るチャンスです。今日から1日10分でも、漢文と向き合う時間を確保してみましょう。
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